目の症状と病気
【眼瞼下垂】
字の如く、まぶたが下がっている状態です。まぶたの縁が黒目の中心を超えるほど下がると、かなりの見えづらさとなります。少しでも目を開こうと眉毛を上げるので、おでこにシワが寄り、疲れが生じます。顎を上げて見ることで、肩がこる方もいます。二重の幅が広くなり、眠たそうに見られ、まぶたの上がくぼみます。
【原因】大きく、生まれつきの「先天性」と、年齢を経るにつれて生じる「後天性」とに分けられます。
・先天性: まぶたを挙げる筋肉の発達が不十分なために、生まれたときからまぶたが下がっています。下垂が高度の場合、まぶたで隠れた目から脳へと物を見る刺激がいかず、視力が発達しない弱視になる危険性があります。
・後天性: 加齢や長年にわたるコンタクトレンズ(とくにハード)使用のために、まぶたを挙げる筋肉や膜(腱膜)が薄くなったり、本来付着している部位(瞼板)から外れたりする「腱膜性下垂」と、上まぶたの皮膚がたるんで視界に覆いかぶさる「皮膚弛緩症」があります。これらは年単位でゆっくりと進行します。
・その他: 動眼神経麻痺や重症無力症などの全身疾患によって起こることがあります。動眼神経麻痺では、複視(両眼で見ると、物がダブって見える)や瞳孔散大なども生じます。重症筋無力症では、起床直後は目が開くが、昼、夕方と時間とともに症状が悪化する日内変動が特徴的です。これらの疾患では、数日~数週間で眼瞼下垂が生じるので、比較的短い経過の際には注意が必要です。
【治療】一般的に外科治療となります。腱膜性のものでは、二重の部分の皮膚を切って、腱膜や筋肉を短縮して瞼板に縫い付けます。皮膚弛緩症ではまぶたの縁か眉毛の下の部分で余分な皮膚を切除します。
先天性の場合、眉毛を挙げる前頭筋とまぶたとを何かしらかの素材で連結させる、前頭筋吊り上げ術を行います。通常、4歳以降の希望時(小学校就学前の手術を希望される方が多いです)に自家組織の大腿筋膜や人工物のゴアテックスシートで吊り上げをします。下垂が高度の場合、弱視予防のために早期(4歳未満)にナイロン糸などで一時的な吊り上げを行います。
動眼神経麻痺では、原疾患(脳動脈瘤や脳腫瘍など)の検索および治療を行い、重症筋無力症では、神経内科で詳しく調べた後に内服治療や点滴治療を行います。
【まとめ】眼瞼下垂の最も多い原因は加齢で、誰にでも起こる可能性があります。治療は外科手術となりますが、下がったまぶたで視界がさえぎられるなど見え方に障害を来たしている場合には、保険治療の適応となります。まれではありますが、神経麻痺など他の疾患に伴って生じていることがありますので、まぶたが下がっていると思われる方は、一度、お近くの眼科を受診するとよいでしょう。