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目の症状と病気

【近視】

 

【近視とは】

 近視とは、屈折異常の一種で、遠方から目に入ってきた光が網膜より手前で像を結び、ものがぼやけて見える状態です。

つまり裸眼の状態(眼鏡やコンタクトを使用しない状態)で近くは見えますが、遠くは焦点が合わずにぼやけてしまいます。

近視は、眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が正常より長すぎるか、角膜・水晶体の光の屈折力が強すぎることにより起こります。

 

【近視の原因】

近視の原因は現在のところよくわかっていませんが、「遺伝要因」と「環境要因」が影響していると考えられています。

強い近視は「遺伝要因」の影響が大きく、軽度の近視では「環境要因」が強いと考えられています。 両方が関与する場合もあります。

 

最近の学校保健統計調査(令和4年度)では小学生は37.88%、中学生は61.23%、高校生では71.56%が裸眼視力1.0未満となっており、10年前と比較すると増加してきています。(裸眼視力1.0未満の子どものすべてが近視であるとは限りませんが、そのうち8-9割は近視であることが指摘されています)その原因としてパソコン・ゲーム機・携帯電話でのメールなど、近くを注視する機会が増えて「環境要因」による近視化を招きやすくなったためと考えられています。

 

【なぜ環境要因で近視が進行するのか】

人間の目は水晶体の周囲の「毛様体筋」が緊張したり、ゆるくなったりしてピントを調節します。

手元よりにピントを合わせた状態が続くとその距離を見やすいように順応するために、眼軸長(目の前後の長さ)が伸びたりして眼球全体の屈折力(目の度数)が手元よりにかわってくることで、近視が進むと言われています。

ひよこの実験で「狭い空間」で育てた場合と「広い空間」で育てた場合を比較すると、「狭い空間」の方が眼軸長の延長(=近視化)があると実験的に証明されています。人間の場合も眼軸長が長くなるほど近視の度数が強くなります。

単に過剰に調節力が働いたままの状態での近視化(調節緊張・いわゆる仮性近視)は、トレーニングや点眼治療などでの回復が期待できますが、その状態が長く続いて眼軸長が伸びて眼球全体の屈折力(目の度数)が固定してしまった場合は、回復が期待できなくなってしまいます。

 

【仮性近視(偽近視)とは】

仮性(かせい)近視または偽(ぎ)近視というのは、仮(かり)偽(ぎ=いつわり)の文字でもわかるように、本当(真性)の近視ではなく、目の調節による一時的な近視のことをいいます。ただし、仮性近視でも目の緊張を取り除かないで放置していると、近視が進行する場合もあります。

 

【病的近視とは】

ごく一部の近視は、幼児期の段階から始まり進行します。眼軸が異常に長くて近視の度が強いため眼鏡をかけてもあまりよく見えるようになりません。また、眼球がかなり大きくなっているため網膜が引き伸ばされて非常に薄くなっており、目をちょっと打っただけで網膜の中心部がひび割れや出血などによって萎縮したり、網膜が眼底から剥がれてくる「網膜剥離」などの症状を起こします。発症原因は不明ですが遺伝が関与しているともいわれます。矯正しても幼児が遠くも近くも見えづらくしているようであれば、注意が必要です。

 

【近視の治療】

近視の治療は、ピントが合わない分をメガネのレンズやコンタクトレンズで矯正することが一般的です。 ただし、仮性の部分に関しては、緊張によって一時的に起こっているだけですので、取り除くことが可能です。(目の調節を休ませる点眼薬を使用します)近視の手術的矯正法として、角膜周辺部分を放射状に切開する「放射状角膜切開術」や、エキシマレーザーを用いて角膜の中心部分を削るレーシック(LASIK)などがあります。しかし、強い近視では効果が弱く、また、安定した視力予後が得られない場合や、角膜の濁りや眼底出血などの後遺症が残る場合もあります。治療を受ける場合には、十分説明を聞き、納得してから受けるようにしましょう。

 

病的近視については現在のところ有効な治療方法がなく、研究がつづけられています。網膜はく離や眼底出血などが起こらないように注意し、起きた場合は早急に手術をする必要があります。

 

【近視の進行予防】

環境要因による近視の進行は、日常の生活習慣を見直すことで防ぐことが可能です。

①「正しい姿勢」と「適度な明るさ」で勉強や読書をしましょう

背筋をきちんと伸ばし、目と本の距離は30cm位離しましょう。姿勢が悪かったり、寝ころんでテレビを見たり読書をするのは、近視が進んだり、左右での視力差がでたりしやすくなると言われています。

また、暗いところやバスや電車の中で本を読むのも負担がかかりやすくなり、あまりよくありません。照明は300ルクス以上の明るさが必要です。
部屋の照明以外にLED電球なら700~1000ルーメン、白熱電球なら40~60W、蛍光灯なら15~20Wの追加照明があるとそのぐらいの明るさを確保できます。電灯には昼光色と電球色のものがありますが、電球色の場合はやや暗く感じることが多く、昼光色もしくは昼光色+電球色のミックスがよいでしょう。

 

② 適度に目を休めて運動もしましょう

長時間、毛様体筋を緊張させたままにする状態を繰り返すと筋肉が固くなり近視が進行しやすくなってしまいます。

勉強や読書を1時間ぐらいしたら、10分間くらい目を休ませることも必要です。
テレビやパソコンの画面は40分以上見続けないようにし、適度に目を休めましょう。
携帯型ゲーム機は一日30~60分以内にしましょう。

携帯電話でのメールも画面が小さいため、10分以上続けると目の負担は少なくありません。最近、メールのやりとりを頻繁にすることで近視が進む例が増えています。

パソコンやデスクワークなどの近業作業のときは、作業中にときどき遠くを見たり、意識的にパチパチまばたきしたり、目を上下左右にぐるぐる動かしたりしてみてください。休憩時には、目をとじて休めたり、蒸しタオル等で温めて血行を良くするのも効果的です。

 

③ 遠くを眺めるのも効果があります。屋外へでて運動もしましょう。

雲や遠くの景色や星空などをボーっと眺めたりすることは近業作業で緊張した毛様体筋を弛緩させ、近視を進みにくくします。また最近の研究で屋外の自然光に含まれる「バイオレットライト」(波長が360〜400ナノメートル)が、近視の進行を抑えるという報告があります。これは健康に悪影響を及ぼすといわれている「ブルーライト」(波長が380〜500ナノメートル)よりも波長が短く、太陽光には豊富に含まれていますが、屋内で使われる蛍光灯やLEDライトにはほとんど含まれていません。直射日光にあたる必要はなく、日蔭や曇りの日でもバイオレットライトは出ています。特に午前中に多いといわれていますので、効率よくバイオレットライトを取り入れたければ午前中に屋外で過ごすのが良いでしょう。

(近視実態調査では屋外にいる時間の1日平均が「120分以上」の場合、「30分未満」と比べ、視力低下との関連が小さいことが示唆されています)

 

④ 規則正しい生活と栄養バランスの良い食事

夜更かしはよくありません。
特に成長期のお子さんの場合は、早寝早起きして、きっちり朝食をとるようにさせるだけでも、近視の進行を防ぐのに効果的とされています。

また、栄養バランスの良い食事も大切です。目に良いとされる健康食品も数多くありますが、特定の栄養素に固執せず、まんべんなく栄養バランスの良い食事を心がけ、規則正しく摂取することが大切です。

【どのくらいになったら眼鏡が必要か】

「教室の一番後ろから黒板の字を見るのには0.7以上の視力」、「一番前からでも0.3以上の視力が必要」です。また、「普通自動車運転免許証も0.7以上の視力」が必要です。

近視の進行を恐れて眼鏡をかけさせたがらない方も多いですが、見難そうに目を細めてばかりいると、よけいな調節力を働かせて近視化を助長させやすいので、そういった場合は適切な眼鏡装用が必要です。

眼鏡を常に装用するか、必要なときのみかけるかは、その人それぞれの度数(近視・乱視・遠視の程度、左右差)や生活環境によって違います。一般に軽度の近視では、もともとのピントが手元にあるわけですから、遠くを見るときのみ眼鏡を装用した方がよいと言われています。中等度以上の近視で手元も遠くもぼやけやすい方、遠視の方、強い乱視のある方はあまりかけはずしせずに常用した方が良いでしょう。

40才以上になると調節力の低下(老眼)で、遠方と近方を一つの度数でカバーすることが難しくなってきます。軽度の近視であれば「手元ははずして見る。遠くを見るときだけ眼鏡をかける」ということで対処できますが、その他の場合は遠方用と近方用(手元用)に2つ以上の眼鏡度数を使い分ける必要があります。

お子様の場合、軽度の近視であれば、授業中など遠くを見るときのみかけさせて、家で勉強や読書するときなど手元を続けて見るときは眼鏡をはずす方が良いと言われています。

 

【近視抑制の治療について】

近視の進行を抑えるためにいろいろな治療法が研究されています。

以下のような治療法があります。

 

① オルソケラトロジー

特殊な形状をしたコンタクトレンズで夜間につけて朝外します。角膜の形状を矯正することで日中の裸眼生活が可能になります。角膜が柔らかい子供のころから始めるほど近視進行抑制効果が高まると言われています。

(当院でオルソケラトロジーを取り扱っています。詳しくはオルソケラトロジーの項目をご覧ください)

 

② 低濃度アトロピン

点眼することで近視抑制効果をを期待します。近方の見えにくさ、まぶしさを感じる副作用が出ることがあります。

(当院で低濃度アトロピンを取り扱っています。詳しくは低濃度アトロピンの項目をご覧ください)

 

③ 多焦点コンタクトレンズ

いくつかの焦点を持ったコンタクトレンズを装用します。

(ご希望の方は医師にご相談ください)

 

④ 累進屈折型眼鏡

海外研究では近視抑制効果がある眼鏡レンズが存在しますが、現状の日本では使えません。

 

⑤ クロセチンサプリメント

クチナシ由来の天然色素成分「クロセチン」の摂取で近視が抑制されたデータがあります。

(当院ではクリアビジョンジュニアとクリアビジョンEXの取り扱いがあります)

 

⑥ レッドライトセラピー

赤色光を覗くことで近視抑制効果が期待できます。

(当院では取り扱いがありません)

 

それぞれの治療法の特徴があります。しかし、まだ日本では保険で認められていない治療法となりますので、自由診療扱いとなります。

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